2019年10月9日水曜日

公判スケジュールには載ってない「ビジネスマン裁判」というジャンル


なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか ビジネスマン裁判傍聴記(プレジデント社)は、僕にとって久しぶりの裁判傍聴記だ。(長いので、以下は"なぜおに"と記す)

これまでに書いた本を記しておくと、「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」「裁判長!これで執行猶予は甘くないすか」「裁判長!おもいっきり悩んでもいいすか」「気分はもう、裁判長」「ぼくに死刑と言えるのか」「おっさん傍聴に行く」「傍聴弁護人から異議あり!」「恋の法廷式」。「恋の法廷式」は文庫オリジナルだったので、「なぜおに」は6年ぶりの単行本となる。
思えばたくさん傍聴してきたものだが、僕の本に他の傍聴本と異なる特徴があるとすれば、取り上げる裁判のほとんどが、一般には知られていない小さな事件であることだろう。

今回は、連載したのがプレジデントオンラインだったため、ビジネスマンに関連する事件書こうと考えた。だが、当然ながら"ビジネスマン裁判"なんてジャンルは存在しない。該当する事件かどうか判断するには、事件の経緯を聞き込む以外の方法がない。効率、ものすごく悪い。ときには、これはという事件に出会えず、過去の傍聴ノートを引っ張り出して書く、というようなこともあった。
しんどいなあ、やめてしまおうかなあと何度か思ったのだが、3年近くも続けたのは理由がある。僕はいわゆるネットメディアに連載持つのが初めてだったので、書いたものがヤフーなどに転載されて多くの人の目に触れるという広がり方も初体験だった。そういうところにはコメント欄のあるものもあり、読者が感想を書き込めるようになっている。朝アップされた記事を午後見ると、数百のコメントがついていたりするのだ。
みんな好き勝手なことを書き込んでいて、なかには筆者を罵倒するコメントもあるが、「こういう反応があるのか」と、ネットメディアビギナーの僕にはうれしく、興味深いものだった。多くの方が読んでくれたことが書籍化への後押しになったのは間違いない。

連載時はその月に傍聴した事件を書くケースが多かったが、書籍化にあたり、構成を変えている。
第1章の<ビジネスマン裁判傍聴記>は、お金編、女・酒・クスリ編、小事件編、情欲編、被告人を助ける人々編
第2章の<法廷の人に学ぶビジネスマン処世術>は、被告人(表情・外見)編、被告人(言い訳・答弁)編、弁護士編、裁判長編、検察その他編

表題のおにぎりを万引きした元公務員は第1章の小事件編に登場する。いやもう本当に聞いていて切ないというか、世の中の理不尽に目頭が熱くなる傍聴体験だった。もちろん「コイツ、悪い奴だなあ」と怒りを覚える被告人も登場するが、本書に登場する"やっちまった"被告人の多くは、どこにでもいそうな人たちである。犯罪から遠い場所にいそうな人たちが、まさかの被告人になっているのだ。
収録された文章は、法廷でのやり取りをもとに、僕の意見や感想を交えて書いたものだ。もしほかの人が同じ事件を傍聴したら、まったく別の意見になったということも十分あり得る。その意味で、「なぜおに」は僕という人間を映す鏡にもなっているのかもしれない。


北尾トロ仕事帖2019年9月 先が読めるノンフィクションなんて

大船「石狩亭」の皿ワンタン550円

「sora de ぶら~ん」宮田珠己編集長と
2019年9月
いつまでも暑い日が続き、信州に秋らしさが漂い始めたのは
9月も終盤に近づいてからのことだった。
この夏は自分としてはよく働いたほうだったので
少し暇になった感じがしたが、
私用も含めると東京に12泊し、
バタバタとはしていたのだった。

集英社の『青春と読書』に
新連載の「猟犬猟師と、いざ山へ。」が載り、
これから1年くらいは、この仕事が
ひとつの柱になっていくことになる。
いまいる猟犬が最後の相棒だと言っていた
猟師の気が変わり
仔犬が誕生するといううれしい展開になった。
僕はそんなに連載抱えるほうではなく、
ひとつひとつの仕事とじっくり
つきあっていきたいタイプだ。
ノンフィクションの仕事は、先が読めない分、
ライターとしての楽しみ(苦しみも)が多い。

個人的事情で、松本での生活が
来春までとなりそうなので、
できることはやっておきたい気持ちが強くなっている。
信州との付き合いを継続させるためにも、
これから半年の間、充実した日々を送りたい。
そんなことを考えるということは、
節目が近づいているってことなのかな。
40代は杉並北尾堂(古本屋)と裁判傍聴だった。
50代は季刊レポ、山田うどん、狩猟、町中華だった。
さて、60代はなんだろう。
答えはまだわかんない。
日々の暮らしも先が読めないほうが楽しいです。
そのぶん苦しみも…いや、それは少ないほうがいい。
中禅寺湖であひるボートを漕ぐ
ダ・ヴィンチの仕事
散歩の達人は「荻窪特集」
朝日新聞に取材された
2019.9月
<原稿>
・ヘンケン発掘ラボ 第11回
ドラえもんの世界で「純肉」は普通のコトだ
インテグリカルチャー(株)代表 羽生雄毅氏
(ラジオライフ 三才ブックス)
町中華はどこへ行く
(論点2020 文藝春秋)
トロイカ学習帳 第139回
落ち着ける場所はどこにある!?
気持ちイイ読書、気持ちワルイ読書
(ダ・ヴィンチ11月号 KADOKAWA)
荻窪特集座談会ほか 
(散歩の達人11月号 交通新聞社)
酸辣湯麺「十八番」 
(散歩の達人web 交通新聞社)
町中華タウン大船アタック大作戦PART2
(sora de ぶら~ん 湘南モノレール)
猟犬猟師と、いざ山へ。 第3回
(青春と読書 集英社)

<受け取材>
町中華特集コメント
(週刊SPA!)

<ラジオ>
「北尾トロのヨムラジ」(FMまつもと)
しつこく温めている「蝉丸」の謡曲を鑑賞