2016.8.16-20
カルハウスは座りションがルール |
仕事が忙しいわけでもないのに慌ただしいのは子どもが夏休みだからでもある。我が家の場合、普段からあまり学校に入ってないが、大手を振って休めるとあって、子どもはいつもに増してダラダラと過ごす。この春からテレビドラマという娯楽を見つけ、録画のみならずDVD、もとからのパフューム好きもある(これはぼくも一緒)ので外に出たがらない。
加えてなんということか、カミさんがいまさらのように『のだめカンタービレ』のテレビ再放送で玉木宏にはまってしまい、家にいるとDVDを見ているかマンガを読んでいるかネット検索しているか「ラプソディインブルー」だのベートーベンだの聞きまくっているのだ。たまに「チアキさま」などと声まで出してうっとりしている。。韓流ブームなんかでおばさま方がキャーキャーいうが、あれに近いのでは。救いは通常は「タマキン」と呼んでいることか。朝からタマキンタマキンと連呼している家族も少ないだろう。。
とにかく家にいるとテレビドラマ各種、タマキン、のだめ地獄なのである(娘はのだめの物まねをしすぎて口調がそうなってきている)。しかも悔しいことに自分もまきこまれ、タマキンはともかく上野樹里がよくてファンになってしまい、結局テレビ版のみならず映画版まで見てしまう。カミさんは喜んでまずます勢いがつき、ツタヤでタマキン出演作を探してくる。そのついでに旧作をレンタルしてきて周防正行監督作品などを娘に説明しながら見直すと、やはりおもしろいので自分だけ部屋にこもっている気になれず、返却ついでに率先して次の5本をレンタル…。これではまるで仕事にならないばかりか、松本にいる間ずっと睡眠不足。ぼくがいまもっとも落ち着いていられるのは移動中の特急あずさ車内だ。
8月3度目の上京は4泊5日の日程。宿泊先は思い切ってカルロス矢吹のカルハウスに腰を落ち着ける作戦だ。個人の家に4泊するのはプレッシャーだが、つぎはいつくるんだとオファーをもらっていたのと、シェアハウスで人の出入りが多く他人が滞在するのに慣れている、鍵を貸してくれるので時間的制約が緩い、と好条件が揃った。
通常なら松本で原稿を書いていたい月の中盤に出てきたのは「のだめ」から逃れる目的もあるけれど、下関マグロ、竜超との共著『町中華とはなんだ』が19日に発売日を迎え、プロモーション活動とイベント出演をしなければならないからである。
初日の16日には銀座松屋のネットFMソラトニワで、「オシキリシンイチの脱力主義」に3人そろって出演後、町中華を食べ、事務所でレポTVの収録をし、23時ごろにチェックイン。スペイン帰りの若者が滞在中で、カルロスを交えて話し込み、明け方近くまで起きていた。知らない人なのでリラックスはできないけれど、環境への慣れはあって、ハートの耐久性がついてきた実感がある。
なるほどと思ったのは、シャワー後、バスタオルを持参のハンガーにかけていたら「それはやめてくれ」と言われたこと。シェアをしている住人は女性2名だが「そういうの嫌がるんですよ」という。「バスタオルはたくさんあるので遠慮なく使ってください」
夜のジョナサンは原稿が進む |
17日はスケジュールをあけて『ダ・ヴィンチ』の原稿を書くつもりでいたが、計算通りに進まず悶々。事務所は喫煙だからそのストレスもバカにならず、途中からジョナサンに陣取って書くことにした。事務所の前にはベローチェもあり、そこでは何度か原稿を書いたがジョナサンは初めてである。喫煙席は空いていてなかなかいい。24時くらいまでやってただろうか。いい加減、ドリンクバーで腹がガボガボになり引き上げてその先を書く。
見直しを終えたら午前3時だった。いくらなんでも他人様の家に行くには遅すぎるので、雑務をしたり他の原稿の書き始めをやってみたりして朝まで時間をつぶし、9時ごろにカルハウス。人の気配がしないのでシャワーをゆっくり浴びた。つい自分のバスタオルを使ってしまったのでバッグにしまう。
徹夜明けなのに、18日は多忙。12時から町中華探検隊(MCT)の活動で浜松町へ行って皆と歩き回ってから飯を食い、お茶をして、まあ遊んでるだけとはいえ、明日のイベント用の写真を撮ったりもしながらだったので眠るわけにもいかない。参加者はマグロ、ヨシオカ、料理家きじまりゅうた、芸人たかはし(キュートン)、カメラの山出の6名。喫茶店にいたらゲリラ豪雨がやってきて、小ぶりのタイミングで駅に戻って解散。
麴町駅を出るとさらに激しい雨。徒歩30秒のドトールに行くのも躊躇するくらいだ。3時から文芸春秋のラウンジで「欠歯生活」の新担当者矢内さんと打ち合わせをし、せっかくきたのだからと別冊文藝春秋の森編集長、角田さんと雑談に励んだ。
眠気は消え、だるさが襲ってくるものの、今度は代々木の米谷テツヤさんの事務所「パス」に行って電書版レポの話などして2時間近く笑い転げた。米谷さんとの付き合いは長く、ときどきしか会わない分、いくらでも話が続く傾向にある。
20時ごろ辞し、カルハウスで寝たいところを巣鴨へ向かったのは、宮坂琢磨君から晩飯に誘われていたからである。昨日、カレーを作ったが甘たtので食べに来てくれとお誘いを受けたのだ。宮坂と言えば民宿ミヤサカの住人で、ヤドカリ生活で大いに世話になっている。みなさんの親切のおかげでぼくのヤドカリ生活は成立しているわけで、たいへん感謝しているのだ。
その相手から食事に誘われたわけである。しかも残り物とはいえ、一人暮らし男の自炊メニューときたら興味津々なわけである。宮坂は味には自信がない、甘みを出すのにバナナを使ったらうまくいかなかったと言いつつ、ボクの作ったものを食べてくださいよと電話してきたのである。カレーをよく作り置きすると聞いていたが、毎度ひとりで食べるのが味気ないのは経験者として知っている。寂しさとわびしさが襲ってくるんだ。
行かねばなるまい。まずかろうとなんだろうとウハウハと食べてあげるのがヤドカリの責務だと思った。で、車内からラインを送ったところ、ひどい返事がきた。
北「代々木から向かいます。はらぺこです」
宮「家には蕎麦オンリー。他に食べたいものありますか」
北「あれ、カレーは?」
宮「昨日始末しました。冷凍がありますが正直おススメできない甘辛さ」
アホやこいつ…。
無呼吸症候群の治療器がバージョンアップされていた。 |
巣鴨駅も豪雨だった。宮坂が傘をもって迎えに来るという。こういうところは親切なんだがなあ。
せっかくだから自炊がいいと思い、サミットで惣菜と飲み物を買った。蕎麦があるならかき揚げも欲しい。ビールだったらナムルもいいだろう。
「刺身いいっすね、刺身刺身」
うるさい宮坂のリクエストでカツオのたたきを加えた。
蕎麦は宮坂が茹でた。皿など不足しているので、あとは買ったままの状態で飯となる。
これはあるよ、普通にある。みんな見せないだけのことだよ。 |
「華がないね」
「まったく。しかもこのカツオのたたきはおいしくないです。さすが298円」
寂しくわびしい男二人飯だ。
食後、カルロス矢吹がインスタグラムに写真をアップしているのを発見したら、ぼくが土産に持ってきた蕎麦だった。カルハウスは土産OKだと思ったので、蕎麦と高原ビールの詰め合わせを持って行ったのだ。
カルロスはオクラや納豆を添えて、とてもおいしそうに調理している。この差は何なのか。宮坂にも見せたら急にしょんぼりした顔になったが遅いのである。しかも蕎麦が多すぎて後半は苦しい食事になる一方なのである。
断続的に雨は降ってて、カルハウスに戻る気力もなくなり、予定外ではあるが民宿ミヤサカに宿泊することになった。そうなる可能性があると思っていたのでバッグには着替えが入っている。シャワーを浴び、例のバスタオルを使った。民宿ミヤサカはタオル干し放題だ。
「あれ、トロさん加齢臭きついっすね」
え? そうかなあ。あまり指摘されたことがないけど匂いがあるのかもしれず、ずばり指摘してもらえるのはかえってありがたい。
しかし待て。いまシャワーを浴び、シャンプーもしたばかりではないか。
「でもツーンとした匂いが漂ってますよ」
宮坂の位置に行くと本当だった。そして、近くにはハンガーにかけたバスタオルが。匂いの元はこれだった。カルハウスで濡れたままバッグにしまいこんだため生乾きになってしまったのだ。
19日。
午後から新著PRのためサンデー毎日編集部→リットーミュージックで昼食、PR用Tシャツに着替え→三省堂書店→本の雑誌社→東京堂書店→書泉グランデ→リットーミュージック→下北沢「丸長」で夕食と献本→「本屋B&B」で発刊トークイベント→打ち上げ→カルハウスに戻る、というスケジュールだった。共著者の下関マグロ、竜超とはずっと一緒で、リットーの宣伝市原さん、営業の方、編集者2名がかわるがわるそばにつく完全仕事体勢である。丸長からは隊員の半澤君が合流してくれ、退屈するどころではなかったが、体力的には疲れた。
日付が20日に変わってから、ヘトヘトになってカルハウスに戻る。カルロスから、帰宅は午前1時半だと連絡が入った。先に寝ててくださいとあったが、シャワーを浴びたら(バスタオルは借りた)目が冴え、帰ってきたカルロスとまたしても明け方まで話し込む。寝たのは6時。
9時に起きるとまだ降っている。
荷物をパッキングし、出かけるタイミングを計っていたらカルロスが起きてきた。サマーソニックにいくが悪天候なので夕方からにしようかなどと言っている。
10時にチェックアウトして事務所に寄り、阿佐ヶ谷の「グルトン」へ。ダ・ヴィンチで連載しているトロイカ学習帳が100回を超えたので、歴代担当者が祝いの会を催してくれた。
もう編集部にいない人、転職した人もいる。わざわざ集まってもらい日高トモキチ、カメラのハラダともども恐縮。
17時のあずさで松本へ。幸福感と肉体的疲労に包まれ爆睡。