『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(角川文庫)
下関マグロ、竜超との共著にして、町中華探検隊がクレジットされた初の著書『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』文庫版がKADOKAWAより発売された。
2年前に立東舎から出た単行本に、書き下ろし原稿と追記を加えた内容で、680円(税別)と、町中華のランチ価格での提供だ。
町中華というのは僕の造語ではないが、言い得て妙だと以前から思っていて、2014年の初頭に何気なく使ったのが始まりだった。最初の1年間は、勝手に町中華探検隊を名乗り、下関マグロとふたりだけで、遊びがてら食べ歩いていたのだ。
そのとき頼まれた某誌の連載で、何をやってもいいというのがあった。町中華について書いていたが、もともとが遊びなので気楽にやっていた。そのうちメンバーが増え始め「散歩の達人」で連載が始まる頃には、もっといろいろ書きたくなるとともに、町中華への愛着も深まっていった。
本書はそんな折、メンバーの一員である竜超が立東舎に企画を持ち込んだものである。刊行時には、いささか展開がもたつくとか、探検隊についての記述が多いなどの意見をいただいた。共著ゆえ、3人3様の意見があり、ガチッとしたものになっていないのはそのとおりだろう。
でも、欠点もある本だけど、「町中華おもしろい」というエネルギーはいっぱい詰まっている。また、この本が出版されたことが「町中華」という言葉の普及に一役買ったのはたしかだと思う。
僕たちにしてみれば、それだけでもやった甲斐があるというもので、町中華が注目され、繁盛すれば、うれしいことである。
しかし、そもそも町中華について抱いた思い、<超高齢化と後継者不足で、絶滅の危機を迎えつつある町中華を、いまのうちに記録していこう>は、解消されるどころか深刻化する一方だ。本書で取り上げた店の中にも、すでに姿を消したところがいくつもある。
気軽に読んだその後で、町中華が食べたくなったら、僕たち著者としては大満足である。
『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』