2020年4月19日日曜日

北尾トロ仕事帖2020年3月 松本から日高市へ、そしてコロナ禍


松本から日高市へ、そしてコロナ禍

坂を転がるように、世の中が暗く、重く変化した1カ月だった。すでに新型コロナの流行は世界各国で起きていたが、3月序盤の日本政府は、豪華クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」の乗客とスタッフ600人もが感染したというのに、まだ東京オリンピックを予定通りにやるのだと息巻いて、現実を直視できないでいた。
民間人は政府ほど邪悪でも馬鹿でもないので、多くの人はオリンピックどころじゃないだろうと思っていたし、実際そうなったわけだけど、緊張感のない政治サイドと報道のせいで、襲い掛かってくるコロナへの具体的な準備が後手に回ってしまった。これは大変なことになろうとしていると皆が思ったのは、志村けんさんが亡くなったあたりからではないだろうか。
僕は3月17日に、7年半暮らした松本から、埼玉県日高市に引っ越した。会って挨拶しておきたい人とも、コロナのせいでそれがはばかられ、バタバタの日々だった。
タイミングが悪かったとも言えるけど、これ以上遅れたら動きが取れなくなっていた可能性もある。引っ越しを終えたときには自粛ムードが高まっており、翌日からdanchu webの仕事で豊橋に出張できたのは幸運だったと言える。3月中、都心に行ったのは打ち合わせのための1度きりだった。
政府の無能ぶりはいまや誰の目にも明らかだ。僕は安倍内閣が本当に嫌いだが、ここまでダメだとは想像がつかなかった。おおいに腹が立つ。この内閣にまかせていたら殺されるという声がSNSにあふれるのもあたり前だと思う。
そんなわけで3月後半はずっと新居にいて、引っ越しの後片付けなんかをやっていた。高校生になる子どもの入学式はGW明けに延期されたが、どうなるか定かじゃない。
当然仕事にも影響が出た。大半の取材が中止または延期となった。雑誌の企画が丸ごと飛んだ。先の予定が立たず、身動きできない。お店のように休業するわけではないが、フリーのライターの多くは実質休業状態に近いと思う。なにしろ取材がしづらいし、感染するならまだしも自分が感染源になりかねないとあっては家にいるしかない。楽しみにしていた関西出張もおじゃん。といって、自主的な取材を行うことも困難。
世間ではこの自粛をきっかけにリモートワークが普及するなどと言われている。僕はもっと大きな変化がアフターコロナには待ち構えていると思う。どこがどうと説明はできないのだけれど、社会のシステムや、人の生き方全体に関わるレベルでの変化が起きそうな気がするのだ。
もちろん先のことはわからない。だけどこう思う心のどこかには、いまのままではない自分のあり方を望む気持ちもあるのだろう。4月はそれについて考える時間が増えるに違いない。

2020.03月
<原稿>
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